学術集会

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学術集会

抄 録

基礎2 

C-09

Aspergillus fumigatus ITCZ耐性臨床株におけるエルゴステロール合成経路制御因子AtrRの破壊による感受性化の検討

演者:萩原 大祐(千葉大学真菌医学研究センター)

背景:

Aspergillus fumigatusはアスペルギルス症の主要な原因菌で、治療薬としてはアゾール系抗真菌薬が中心的な役割を果たしている。特に慢性肺アスペルギルス症の治療においてはアゾールの長期投与を余儀なくされることが多く、そのことで薬剤耐性菌の発生リスクを高め、根治に難渋するケースが散見される。また、投薬治療に因らないアゾール耐性株による感染も欧州を初めとして近年報告されており、耐性菌の脅威が高まってきている。
 我々の研究グループでは、A. fumigatusにおいてアゾール耐性に関与する転写因子の同定と機能解析から、アゾール耐性制御機構を明らかにすることにより上記問題へ取り組んでいる。現在までに、Zn2-Cys6型転写因子AtrRを見出しており、atrR遺伝子破壊株はアゾール薬に対する高感受性を示す事、アゾール薬の標的分子Cyp51Aの発現が顕著に低下する事を明らかにした。また、エルゴステロール合成経路の主要な因子(Erg3, Erg24A, Erg25A)の遺伝子発現も著しく低下しており、これらのデータからAtrRはエルゴステロール合成経路の調節因子として機能していることが示唆された。
 臨床的に問題となっているアゾール耐性株の多くでは、Cyp51A分子の54番目のグリシンや220番目のメチオニンなどに変異が存在する。薬剤との結合性能が低下することでエルゴステロールの合成阻害効果がキャンセルされると考えられている。一方で、AtrR遺伝子を破壊するとcyp51Aの発現が低下し、アゾール薬に感受性を示すことから、耐性化Cyp51Aを持つアゾール耐性株においても、AtrR遺伝子破壊によりアゾール薬感受性増強効果が見られると予想された。
 そこで、千葉大学病院で分離したCyp51A分子に耐性アミノ酸変異(G54E)を保持する臨床分離耐性株を親株としてatrR遺伝子破壊株を作製し影響を検証した。イトラコナゾールの最小発育阻止濃度は親株(耐性株)の>8 μg/mLから、atrR遺伝子破壊により0.06 μg/mLへと低下しており、投薬治療が可能なほどに感受性化することがわかった。また興味深いことに、フルコナゾールの最小発育阻止濃度も>64 μg/mLから、atrR遺伝子破壊により1~16 μg/mLへと低下した。したがって、AtrRを機能阻害することでCyp51A変異によるアゾール耐性を抑圧できること、さらにはフルコナゾールに対する一次耐性をも抑圧できることが示唆され、アゾール薬の補助剤の標的として当該分子が有望である事が示された。