学術集会

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学術集会

抄 録

基礎1 

C-07

Candida glabrata において特有の進化を遂げた小胞体ストレス応答機序と病原性の関連

演者:宮崎  泰可(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 感染免疫学講座[第二内科])

 臓器移植など先端医療の発展やHIV感染者の増加に伴い、日和見感染症として発症する深在性真菌症への対策は極めて重要な課題となっている。なかでも、カンジダ症は最も高頻度にみられる真菌症の一つである。有効な抗真菌薬が限られており、特にアゾール系薬に低感受性のCandida glabrata感染症は治療に難渋することも少なくない。本研究では、新たな薬剤標的分子の発見に向けて、C. glabrataにおける薬剤耐性や病原性に重要なシグナル伝達経路の機能解析を行った。
 小胞体はタンパク質の合成や輸送など生命維持に重要な役割を担っており、真核生物にのみ存在する細胞小器官である。種々のストレスにより二次構造に異常のあるタンパク質が増加すると、細胞は小胞体の仕事量を増やすか過剰な負荷を減らす必要がある。前者はunfolded protein response(UPR)と呼ばれ、小胞体のセンサータンパク質Ire1からのシグナルにより、シャペロン分子などの活性化を促す。一方、後者はIre1による小胞体内mRNAの直接切断・分解であり、regulated Ire1-dependent decay(RIDD)と呼ばれている。UPRはほぼ全ての真核生物で保存されているが、RIDDは高等生物のみが獲得した機序とこれまで考えられてきた。ところが、C. glabrataはUPR機能を有さず、代わりにRIDDを獲得しているという驚くべき事実が本研究により明らかとなった。C. glabrataは小胞体ストレスに高い忍容性を示し、Ire1の機能は病原性にも深く関与していた(図1)。さらに、カルシニューリン(Ca2+依存性タンパク質脱リン酸化酵素)を介したシグナル伝達経路とSlt2 MAPK経路が、UPRに類似した役割を担っていることも明らかにした(図2)。
 小胞体ストレス応答は、Aspergillus fumigatusCryptococcus neoformansにおいても病原性と抗真菌薬耐性の両者に重要であることから、新たな治療標的候補として近年盛んに研究が行われている。本研究で得られた知見は、極めて新規性が高く、進化生物学的観点からも大変興味深いものであった。今後更なる解析により、本研究成果を創薬研究へ活かしていきたい。