学術集会

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学術集会

抄 録

病理 

B-12

外科的に切除された慢性肺アスペルギルス症の臨床背景と病理

演者:伊藤 誠(刈谷豊田総合病院 病理診断科)

背景と目的:

慢性肺アスペルギルス症の概念が整理され、臨床病態が明らかになるに従って、その初期病変である菌球性アスペルギルス症を起点として、慢性壊死性肺アスペルギルス症に進行する過程の病理学的な評価が問われている。当科で外科的切除の対象となった菌球性ないし慢性肺アスペルギルス症の臨床背景および病理学的な特徴を明らかにし、慢性進行性アスペルギルス症への進展のプロセスを検討した。

対象と方法:

2008〜2011年まで、当院胸部外科で切除の対象となり、病理学的に菌球性または慢性肺アスペルギルス症と診断された10例を対象とした.臨床経過、画像診断、検査データは電子カルテより情報を抽出した。肉眼所見と病理組織学所見の詳細を解析した。

結果:

A. 臨床的な特徴
 患者の年齢は34?72歳(中央値62.5歳)、男女比は8 : 2であった。基礎疾患としては、陳旧性結核空洞4例、慢性閉塞性肺疾患による気腫性ブラに合併したもの3例、非結核性抗酸菌症2例、肺分画症1例である。発見の契機は検診での胸部異常陰影であることが多く、小径病変のため腫瘍性病変との鑑別のために胸腔鏡下区域切除される例が多かった。一方、慢性の咳嗽、喀血や血痰のエピソードで発見された4例は、粗大な空洞形成や胸膜の線維化を呈した。画像所見では胸膜下結節性陰影や空洞内硬結を示し、周囲肺実質の硬化像や胸膜肥厚や胸膜の陥入を示し慢性進行性アスペルギルス症への進展過程と考えられた。
B. 病理学的な特徴(表1、 2)
 慢性肺アスペルギルス症への進行の予兆として以下のような病理組織学的特徴を認めた.すなわち、1) 菌球の増大や空洞域の拡大と二次的な気管支拡張に伴う活動期の炎症、2) 空洞壁の壊死や柵状肉芽腫様変化、炎症性肉芽の増生による気道内ポリープの形成、3) 周囲肺実質や胸膜を巻き込む線維性硬化、4) 菌球崩壊による経気管支的な壊死炎症像の拡大である。

結語:

○ 陳旧性結核による空洞内感染に加えて、非結核性抗酸菌症、慢性閉塞性肺疾患、気腫性ブラに合併する肺アスペルギルス症が増加している。
○ 慢性肺アスペルギルス症の病理診断では、菌球増大や菌球崩壊による炎症の活性化、空洞壁や気道粘膜の壊死範囲と拡大が空洞病変の増大に寄与している。
○ 気道粘膜や空洞壁の柵状肉芽腫性炎症、炎症性肉芽組織の増生などが活動性炎症として重要である。