学術集会

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学術集会

抄 録

病理 

B-11

慢性肺アスペルギルス症の病理組織学的検討

演者:栃木 直文(東邦大学医学部 病院病理学講座)

要旨:

慢性肺アスペルギルス症(CPA: chronic pulmonary aspergillosis)は、気道の解剖学的な再構築のみならず、軽微な防御能の低下により上皮組織の破壊や限定的な侵襲をきたす病態と定義される。線毛上皮に裏装された空洞形成を認め、上皮の一部が剥離消失してびらんを形成することが知られているが、空洞壁の性状や菌体成分との関係などの病理組織学的検討はほとんどなされていない。今回我々は外科的に切除されたCPA症例に対し、空洞を裏装する上皮剥離ならびに空洞壁の構造を中心とした組織学的な解析を行った。さらに、ファンギフローラYを用いて、菌体成分の組織内分布を検証した。また、末梢血好中球数やCRP値、β-(1,3)-D-glucan値と、組織学的所見との相関を検討した。

対象:

25例のCPA切除症例を検討した。年齢は28-78歳(平均58.2歳)、男性21例、すべて上葉の病変であった。血液悪性腫瘍や抗癌化学療法などの防御担当細胞の顕著な機能低下を予測させる症例は含まれていないが、21例(84%)が、糖尿病やステロイド使用など軽度の免疫機能低下患者であった。(結果)25例全てに空洞を認めた。13例(52%)でSplendore-Hoeppli phenomenonを認め、この群では空洞壁に対するびらんが少ない傾向があった。また4例(16%)では、菌体から離れた空洞壁に形成された炎症性肉芽組織内に、ファンギフローラY陽性物質の顆粒状沈着を認め、うち2例では血中β-(1,3)-D-gulcanが高値であった。

結語:

炎症性肉芽組織内の菌体成分の浸淫と血中β- (1,3)-D-glucan値の上昇との因果関係が示唆された。CPAにおける呼吸不全増悪に寄与する重要な因子として末梢気道の器質化が示唆された。これは、空洞壁の活動性糜爛面より末梢気道を介して周囲の肺胞腔に供給される炎症性滲出物に対する肺胞レベルでの滲出と瘢痕治癒過程によって生ずる変化であり、生体内でのアスペルギルスの増殖との関連は薄弱であろう。