学術集会

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学術集会

抄 録

アスペルギルス1 

B-02

生体腎移植後に Aspergillus udagawae が検出され、多発真菌塞栓症を発症した1例

演者:細萱 直希(山梨大学医学部附属病院 第2内科)

はじめに:

真菌塞栓症は真菌性心内膜炎やムーコル症などでみられることがある稀な病態である。今回我々は、生体腎移植後にtacrolimus(FK506)による非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)を発症したため免疫抑制療法に難渋し、その経過中にA. udagawaeが検出され、さらに多発真菌塞栓症を発症し死亡した一例を経験したので報告する。

症例:

58歳男性。原因不明の腎不全に対し、妻をドナーとした血液型不適合生体腎移植を行った。移植前処置としてmycophenolate mofetil(MMF)、FK506、prednisolone(PSL)、二重濾過血漿交換、rituximabを使用した。腎移植後経過は良好であったが、術後3日目に破砕赤血球と血小板減少が出現し、精査の結果FK506によるaHUSと診断した。metilprednisolone pulseと血漿交換を開始し、PSL、MMF、basiliximabを代替免疫抑制療法とした。移植14日後に肺空洞性病変が確認され、徐々に炎症反応も増悪し、26日後には汎血球減少が出現した。これらに対し各種抗菌薬、接合菌も考慮し抗真菌薬(L-AMB)も開始したが感染のコントロールはつかず移植35日後に移植腎を摘出した。しかしその後さらに腹部皮膚壊死、右総腸骨動脈塞栓などを合併し死亡した。移植腎の梗塞巣、皮膚壊死部、動脈塞栓の病理検体には糸状菌がみられ真菌による多発塞栓症であることが判明した。経過中に気管内痰から検出された糸状菌を同定して頂いたところ、A. udagawaeであることが判明し、 本菌による多発真菌塞栓症が疑われたため、病理検体より真菌の遺伝子学的同定を行って頂いたところ、真菌はCunninghamella bertholletiaeであることが判明し、 播種性ムーコル症による多発塞栓症であることが明らかとなった。

結語:

ムーコル症はステロイド使用や腎不全などが感染リスク因子として知られており、また臓器移植例としては腎臓移植後が最も多いため、早期よりL-AMBを開始したが播種性ムーコル症は進行し救命できなかった。ムーコル症は死亡率が高いため、基礎疾患の治療や早期診断、可能な限りの外科的切除だけでなく、高用量L-AMB使用や、Echinocandin系抗真菌薬の併用などについてもより積極的に考慮する必要がある。